願いを叶えた方々

大阪府 N様

筋電義手で水が飲みたい

筋電義手で水が飲みたい
AI搭載筋電義手で、願いを叶えました。

CaNoWムービー

お喜びの声をいただきました

CaNoW_008_筋電義手で水が飲みたい N様

N様

自分の手で水を飲んでみたい。 「普通やんか」って、普通の方からすると何ともない、あたりまえに出来る所作ですが、私にとっては・・・左腕を小さい時分に失い、物心ついたときから左腕がない人間からすると、切望する思いでした。今回、筋電義手という 断端部分に残っている皮膚からの電気信号を読み取って指を動かす機器のご案内を頂きましたが、事前説明で実現性はまさに半々であり、動く可能性もありますが、反対に全く動かせない場合もあり得ると説明を受け、駄目だった場合は絶望する分、早々に見切りをつけて東京ディズニーランドの夢の国ですごした方が楽しいのではないか!? と、期待と絶望感半分半分の気分で東京に向かいました。
CaNoWさんで手配頂いた先の電気通信大学で、初めて筋電義手を装着。これが、なんと、指が動いたのです。 そのまま筋電義手でもってコップから水が飲め、そして他にも筋電義手でフォークを持ってステーキを切って食べることが出来、これこそまさに夢のような時間でした。私にとっては東京デ・・ デンキツウシン大学こそが、まさに夢のお国でした。

願いを叶えるまで

「筋電義手で水が飲みたい」

そんな願いを応募していただいたのは、大阪にお住いのNさん。幼少期の事故で左腕のひじから下を失って以来、右手で生活のすべてをまかなってきました。

Nさん 『物心ついたときから片手だったので、日常生活で困ることはほとんどありません。でも、ゴムの義手は気味悪がられることもあったり、スポーツなど一部できない動きがあったりで、幼い頃は悔しい思いをすることもありました。

そんなとき、新聞で見た筋電義手に興味をひかれ、調べていくうちにYouTubeで筋電義手を使って、2人でジェンガをやっている動画を見つけました。あんなことができたらいいなと思ったんです。

動く左手があったなら、コップで水を飲んでみたい。健常な方からすれば、些細な、小さすぎる願いかもしれませんが、自分にとっては切実な願いなのです。』
CaNoW_008_電気通信大学の前で
左はCaNoW同伴スタッフ:織田。Nさんと一緒に電気通信大学に到着。
まだまだ実用例が少ない筋電義手。CaNoWスタッフもまずは情報を集めるところから開始しました。

義手は機能面から、『装飾義手』『能動義手』『筋電義手』に分かれます。

『装飾義手』は、文字通り見た目を補うのみで動かないもの。

『能動義手』は、肩でケーブルを引く動作を行うことで、手のひらやひじを動かすもの。

そして『筋電義手』は、腕の切断部分に残った筋肉が動く際に発する微弱な電流(筋電)を読み取り、それに応じた動きをモータで再現するものです。
CaNoW_008_Nさんが普段お使いの装飾義手
Nさんがお使いの装飾義手。一見すると本物の手のようですが物を持ったり、指を動かしたりすることはできません。
能動義手、筋電義手のどちらも、一般的に数か月のリハビリを経て日常生活で使えるようになるものであり、筋電義手を手に入れたからといって、すぐに使えるものではありません。

数か月のリハビリが必要だとすると、願いの実現に数か月かかってしまう…

この願いは、CaNoWでは実現できないのではないか。

そんな思いがよぎった時、CaNoWスタッフは『直観的な操作を可能としており、最低限の操作を3分程度の初期設定と少しの訓練で習得できます。(※)』と銘打たれた、最新のAI(人工知能)を用いた筋電義手を見つけました。
CaNoW_008_AIを用いた筋電義手
開発元である、国立大学法人 電気通信大学発の『NPO法人電動義手の会』に、問い合わせたところ、CaNoWの願い実現への協力をご快諾。

ただし『長く欠損肢を使っておらず、筋肉の動かし方を忘れてしまっていたり、そもそも切断面の形状が合わずに装着できなかったりすると、もしかしたら当日動かせない場合もある』とのこと。

本当に筋電義手が動かせるのかは分からない…『それでも憧れの筋電義手をつけてみたい』と大阪からはるばるお越しくださったNさんとともに、CaNoWスタッフは、国立大学法人 電気通信大学の研究員、山野井佑介さんを訪ねました。
CaNoW_008_オープンキャンパスの様子
2019年11月某日。願い実現の当日は、電気通信大学のオープンキャンパス中。たくさんの出店と若者の熱気に包まれていました。
CaNoW_008_山野井佑介さん
右:NPO法人電動義手の会 国立大学法人 電気通信大学 研究員 博士(工学)山野井佑介さん
CaNoW_008_「UEC-eHand」
AI搭載筋電義手 製品名 :「UEC-eHand」
筋電義手の装着前に、Nさんの左腕から筋電を読み取ることができるかをチェック。切断部分に電極バンドを取り付けます。

Nさんはこの日のために、普段使わない左腕で荷物を持つなど、筋トレをしてきたそう。結果、無事にNさんの左腕の筋肉から、筋電を確認できました。
CaNoW_008_筋電を読み取る電極バンドを装着
まずは、左腕の先端に、筋電を読み取る電極バンドを取り付けます。
CaNoW_008_筋肉の動きをタブレット端末で確認
Nさんの筋肉の動きを読み取りタブレット端末で確認します。
次は筋電義手を装着。この筋電義手で可能な動作は『親指を開く・内側に向ける』『親指以外4本の指を開く・内側に曲げる』のみですが、これだけの動作でも日常生活の85%の動きがカバーできるそう。

次は義手を装着。Nさんの左腕の筋肉の動きを、端末に記憶させます。

このとき、Nさんは、失われた左手で『握ったときの筋肉の動き」と『開いた時の筋肉の動き」を行うのですが、いざやってみようとすると長年使わなかった左腕の筋肉を動かすのに一苦労。
CaNoW_008_左手の筋肉の動かし方をイメージしやすいように、右手でも同じ動作を取る様子
左腕の筋肉の動かし方をイメージしやすいよう、右手でも同じ動作を取ります。
CaNoW_008_筋電義手が開きました
「開け!」と、左手の筋肉を右手同様に動かすと、筋電を読み取った筋電義手が手を開きました。
しばしの微調整の後、ペットボトルを握ってみることに。500mlのペットボトルでは腕と筋電義手をつなぐソケット部分から腕から抜けてしまいそうでしたが(※)、半分ほど水を抜いて軽くしたところ、持ち上げることに成功しました!

※通常はオーダーメードでソケットを作成するため、ある程度の重さまでは持ち上げることが可能です。
CaNoW_008_ペットボトルを握ることに成功!
少し水を抜いて軽くしたペットボトル。無事に握ることができました!
一般的な義手では、この動作が出来るまでにしばらくリハビリが必要です。AI(人工知能)が使用者の筋電に動作を合わせてくれる、この筋電義手でなければ、初めて使用した当日に思い通りに動かすことはできなかったでしょう。

そして、いよいよNさんの願い『水を飲みたい』にトライ!コップやペットボトルでは、こぼれてしまう可能性があるので、フタ・ストロー付き容器の飲料に変更して挑戦です。
CaNoW_008_Nさんの願いに挑戦
Nさんの願いに挑戦。
容器を握るところまでは、うまくできるのですが、腕を胸元へ引き寄せる動作が難しく、なかなか口元へ運べません。

Nさんの左腕も、義手の重みと慣れない動きで、かなり疲れている様子でしたが、あきらめずに何度も何度も挑戦を続けます。20回ほどのトライで、とうとう成功!
CaNoW_008_とうとうドリンクを飲めたNさん
20回ほどのトライのあと、とうとう飲むことに成功!
Nさん「普通に水を飲むという行為なんですけれども、左手で水を飲めるという事が、本当においしいです…!」

念願の『水を飲む』を実現してNさんも大満足の様子。

Nさん「こんな…当たり前のことが…自分にとっては本当にうれしくて…。もう言葉になりません。本当に、ありがとうございました。」

さらに、Nさんに事前にいただいていた、3つのリクエストにも挑戦。

・いつか見たYouTubeの動画のように、ジェンガをしてみたい

・お札を数えてみたい

・両手でステーキを切ってみたい
CaNoW_008_ジェンガを積むNさん
ジェンガを積むNさん。これは楽勝でクリア! Nさんも満足げ。
CaNoW_008_お札を数えるNさん
お札を数えるNさん。左手でしっかりとお札を持っています!
CaNoW_008_ステーキを切るNさん
いつもは『ステーキは、お店のシェフに予め切ってもらったものを、はしで食べています』
続いては、「両手でステーキを切ってみたい」。スタッフが朝早起きして焼いてきた高級黒毛和牛を、筋電義手を使ってカット。
CaNoW_008_ステーキを切る様子
フォークが細く、うまく持てないため、ビニールを巻いて太くする工夫をしています。
CaNoW__008_思わず涙を流すNさん
念願の自分でカットしたステーキを頬張り、思わず涙が…
無事に筋電義手を使ってステーキを完食したNさん。

『こんなに自分でナイフとフォークを使って食べるのがおいしいとは思いませんでした…」

念願の達成に、思わず目尻に涙がにじみます。
CaNoW_008_山野井さんとNさんのツーショット
山野井さん 「今回は短時間ではありましたが、筋電義手を使用していただき、今までできなかったことができたと喜んでもらえたことは、この研究に携わるうえで最も苦労が報われる瞬間です。」
CaNoW_008_別の筋電義手を試すNさん
オープンキャンパスで別の筋電義手を試すNさん。ピースをさせてみるなど、実に楽しそうです。
このたび、貴重な筋電義手をお貸しいただくなど、企画に全面的なご協力をいただいたNPO法人筋電義手の会 山野井さん、別途インタビューにご協力いただいた国立研究開発法人 国立成育医療センター 高木先生、オープンキャンパスでおもてなしいただいた国立大学法人 電気通信大学の皆さん、ご協力いただき本当にありがとうございました。

CaNoWは、医療を取り巻く技術の発展を今後も応援していきます。
CaNoW_008_ビールを飲むNさん
『夢のような1日』をビールで締めくくり。お疲れ様でした!

願い実現のキーポイント

使用開始時にAI(人工知能)を用いて使用者の筋電を記憶することで、長期のリハビリが不要で使用可能な筋電義手。厚生労働省の完成用部品として販売されており、保険適用での購入が可能です。
当日同伴スタッフ:織田かおり(M3)

企画プランニング:織田かおり(M3)

文章作成:織田かおり(M3)/宮森渚朝(M3)

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