■ 子どもたちに伝えたい

しかし、そんな幸せな日々を過ごす中、恵那さんは2016年夏に副咽頭間隙腫瘍、腺様嚢胞ガンを発症。抗ガン剤治療を繰り返し受けながら、2020年10月には緩和ケア病棟へ移り、12月に永眠されました。
恵那さんは生前、2020年10月にCaNoWの願いを叶える企画に応募されます。恵那さんの願いは、『結婚式をしたオーストラリアを子どもたちと一緒に見たい』というもの。
結婚当初から、いつか子どもたちをオーストラリアに連れていきたいと思っていた恵那さん。今は現地には行けないけれど、少しでも子どもたちにオーストラリアの素晴らしさを伝えたいとの願いでした。

■ 恵那さんの思いを夫が引き継ぐ
恵那さんの願いを叶えるべく、CaNoWスタッフは2つの動画制作作業を進めます。一つは、恵那さんの結婚式やオーストラリアを満喫している様子をまとめた動画を作成。もう一つは恵那さんの思い入れのある場所を撮影し、VR動画としてまとめるものです。10月:まずは、結婚式・オーストラリアで観光している写真を動画として編集。恵那さんから結婚式のエピソードを中心にヒアリングし、新婚旅行が夫婦そろって初めての海外旅行になったこと、牧師さんが女性で珍しかったことや、オーストラリアの気候など、当時の思い出を伺いました。
11月:VR動画を作成開始。オーストラリア在住の日本人コミュニティサイトを経由し、現地の動画撮影が可能なスタッフを決定します。ゴールドコーストの海岸、マウントタンボリン、アルバート教会、ブリスベンの街並みなど、恵那さんから伺った思い出の場所を中心に撮影を依頼。また、アルバート教会は通常は中に入って撮影することが出来ませんが、CaNoWスタッフが教会担当者に今回の経緯を説明。恵那さんの現状や思い入れの地であることを伝え、交渉の末、特別に許可が下りて撮影に至りました。
12月:オーストラリアでのVR撮影が完了。12月5日に病室で企画を実施する予定でしたが、直前の12月3日に恵那さん永眠。
■ 思わぬサプライズに涙…!
恵那さんは亡くなってしまいましたが、2021年3月、恵那さんの願いを引き継いで内容を少し変更し、夫・勝也さんが企画を実行することに。企画当日は、勝也さんからこの日のために集まった親戚に向けて、今回の企画の経緯を説明します。恵那さんの思い出を振り返る温かな場としたいとのことで、動画鑑賞会がスタートしました。

しかし、それ以上に驚いたのは…、サプライズとして生前の恵那さんの声が入っていたこと。
本来は、恵那さんが皆の前で動画を見ながら、当時の思い出を語ってもらう予定でしたが叶わず。しかし、ヒアリングで録音していた恵那さんの声をCaNoWスタッフが編集し、動画に乗せました。思わぬサプライズで久々に恵那さんの声を聞いた親族の皆さんは、驚きと懐かしさで思わず涙を流す人も。

全ての動画を一通り見終えると、改めて夫・勝也さんが親族に向けてご挨拶。
恵那さんの闘病に力添え頂けたことへの感謝や、今後も親戚として変わらぬ付き合いお願いしますと気持ちを伝えます。また、今後、母代わりになるであろう恵那さんのお姉さまに花束を贈呈しました。
■ 企画を振り返り、夫の思い

恵那さんは、直接企画を見届けることは出来なかったものの、夫・勝也さんが無事に願いを引き継ぎました。企画準備から当日まで様々な思いを遂げてきた恵那さん一家。動画やVR鑑賞、そして改めて思いをはせたことにより、きっと恵那さんにも思いが届いたのではないでしょうか。そして、恵那さん一家にとっても、新しい1歩と繋がるよう、願いなら幕を閉じました。