■ 見た目は元気そうに見えても
2007年3月に生まれたYくん。出生直後から今まで度重なる手術や在宅酸素療法など、常に生死の不安を抱えながら過ごしてきました。3歳までに3回の手術を経験。その後はペースメーカーの植え込み手術を行うも、数年後には機器の不具合による緊急入院となったり、今後も定期検査や将来待ち受ける手術があったりと、心配は尽きません。 また、先天性心疾患のため風邪を引きやすく、肺炎のリスクもあります。さらに、激しい運動の制限に加え、感染リスクを防ぐために、人が集まる場所に対しても制限があるといいます。 ただ、見た目は健康そうな男の子に見えるため、生死に関わるような疾患を抱えているようには見えません。その分、周りから理解されない悔しさや苦悩と抱えています。
■ もっともっと絵が上手くなりたい!
生まれながらにして心疾患を抱えているYくんですが、Yくんの生活の全てが病気に侵されているかというと、決してそんなことはありません。 Yくんは、絵が上手なお父様の影響をうけて、幼い頃から絵を描くことがとても好きな男の子でした。小学校4年生のときには、「もっともっと絵が上手くなりたい!」と思いが募り、将来も続けられることを見据えて本格的に絵の教室に通い始めます。
■ 絵本を作るまでの過程
2020年8月に絵本の製作をスタート。製作にあたり、改めてYくんの生い立ちを振り返ったYくんとお母様。普段口に出せなかった本音や、逆に言葉にしたことで自分自身の気持ちに気づく場面も。 絵本に採用した絵の撮影はプロのカメラマンが担当。さらに、本のタイトルや文章作成、英文校正、装丁や絵本全体のデザインなど、一つ一つ丁寧に作業を進めていきます。コロナ禍の影響で作業が中断した時期もありましたが、製作開始から約1年半後の2021年4月、無事絵本が完成しました。 Yくんの絵の先生からは、「とても素敵に仕上がっていますね。技術的なことを言えば、絵の具の色の混ぜ方が上手くなったとか、鉛筆や筆の持ち方が上手くなってタッチが上手くなったというのももちろんあります。でもそれ以上に、描くことによって色々な人と関わって、色々な活動が出来て、知らない人に絵が行き届いて、中々小さい子どもが体験しないようなことを体験していると思います。僕も一緒に楽しませて頂いた感じです」とのお話をいただきました。■ 当初想定の数十倍の反響
絵本は、出来るだけ多くの方に読んでもらえるよう、病院の待合室やプレイルーム、病院図書館等への設置を念頭に、絵本に関するアンケートに答えてくださったm3.com会員の皆さまへの寄贈を決定へ。 ここでCaNoWスタッフの予想を超える出来事が起きます。 当初は50冊の寄贈を予定していたところ、予定数を大きく上回る1000件もの応募が殺到。嬉しい悲鳴とともに、わずか1時間で募集を終了しますが、その後も続々とメールでの問い合わせが届く事態に。 最終的に360冊の増刷をかけることになったものの、ここまでの反響の大きさにスタッフ、そしてお母様とYくんも驚くばかりでした。