「サッカー観戦がしたい」HUSの少年が挑戦、夢は叶う?

この記事は、2019年11月2日に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: 患者の願いを叶える『CaNoW』Vol. 4 「サッカー観戦がしたい」HUSの少年が挑戦、夢は叶う?」のタイトルで掲載されたものです。



人生100年時代、2025年には全人口の約18%にあたる2179万人が後期高齢者に。さらに医療の発達により、さまざまな疾患を持ちながらも、その病と共生する人々が年々増加しています。そんななか、「病に負けない、人生を輝かせる」という考え方のもと、患者さんの願いを実現し、生きるモチベーションを高めようという支援プロジェクト「CaNoW(カナウ)」がこの秋スタート。ここでは、CaNoWを利用してサッカー観戦に挑戦する少年の願いに密着しました。

4歳でHUSを発症。前向きに一緒に考えてくれる医師に救われた

T君と看護スタッフ
T君がHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症したのは4歳の時。O157による感染症から嘔吐や発熱を繰り返し一時は意識不明に。医師からも「目が覚めるかどうか保証できない」「寝たきりになるかもしれない」と告げられる状態から2か月後に意識を取り戻し、現在は後遺症に悩まされつつも車いすを使って学校生活を送れるまでになりました。

そんなT君が今回、CaNoW(カナウ)を使ってチャレンジする目標は「サッカー観戦」。今回観戦するのは2019年7月27日にミクニワールドスタジアム北九州で行われた、地元J3ギラヴァンツ北九州vsカターレ富山のゲーム。T君の挑戦を支える家族の方や、ナーシングサポーターとして同行されていた看護師の方にお話を聞きました。

─── T君がHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症した当時の闘病状況、そして現在の様子について教えてください。

お母様:
この病気を発症したのは4歳の時です。最初は嘔吐・発熱の症状があり、北九州市立総合医療センターに入院しましたが、一週間後に意識がなくなり、福岡市の九州大学附属病院に搬送されました。その後直ちにICUでの治療が始まり、ようやく意識を取り戻したのは2か月後のこと。それからは一般病棟でリハビリを続けながら2か月ぐらい過ごして退院しました。

お父様:
九大附属病院搬送後、「目が覚めるかどうか保証できないし、たとえ覚めても寝たきりになるかもしれない」と医師から告げられるなど、大変不安な毎日でした。また、妻もつきっきりで看病し、半年間家に帰ってきませんでした。それでも先生方が手を尽くしてくれたおかげで、なんとか目を覚ますことができ、今は皆と同じ小学・中学校に通って授業を受けるまでになれました。たしかに今も体調を崩すことは多いのですが、何でも食べられますし、当時からは考えられないほど良い状況にあると感じています。

─── 病気の原因はなんだったのでしょうか。

お母様: O157菌による感染症ということは判明したのですが、いつ、どこで感染したかは結局わかりませんでした。実は4歳上の兄も一緒に発症したものの軽症で済んだので、当時この子には病気に対抗できるだけの免疫や体力も備わっていなかったのだと思います。
試合を観戦するT君とそれを見守るご家族

─── 普段、生活していくうえでのご苦労、および通院状況について教えてください。

お母親:
今では14歳になり、発症から10年経ちますが、腹痛の発作を頻繁に起こすことが一番大変です。小学校時代は、ほぼ週2回ペースで発作を起こし、その都度病院に連れていき数日間入院するのがパターンでした。ただ、最近では嘔吐しても一過性で終わるので、なんとか家で様子を見られるようになっています。そのため、あまり病院に行かずに済んでいるのはうれしいところです。

お父様:
近頃入院の頻度が減っている理由として、家の中では車椅子ではなく、“ハイハイ”や“伝え歩き”しながら移動していることがあり、それで体力がついてきたのかと思っています。

─── 通っている病院や主治医の先生への印象を教えてください。

お母親:
北九州市立総合医療センターに10年も通っていたため、何度も主治医も変わりました。ただ皆さん「病気だから仕方ない」「そんなもんですよ」などとは言わず、「じゃあこうしましょう」と一緒に考えてくださるので、その点はすごくありがたいです。ここ2年みていただいている主治医は女性ということもあり、「向けた学校側との面談は私も同席しましょうか」「福祉サービスと自分が連携もできます」など、中3で進学を控えているこの子の生活面まで気遣ってくださいます。そういう点は非常に心強いですね。

サッカー観戦は屋外のため不安はあったが、看護師同伴なら安心できると思って挑戦

試合を観戦するT君とお母様

─── サッカー観戦にチャレンジしようと思ったきっかけは?

お母親:
周りにサッカーをする友だちが多く、この子も「サッカー楽しそう」というイメージが元々あったようで、「ギラヴァンツの応援に行きたいね」と話していた時に、このサービスのことを知りました。そこで「スタジアムでのサッカー観戦のサポート」をお願いしようと思いました。

お父様:
年に2~3回は家族みんなでヤフオクドームまで野球観戦に行っています。ヤフオクドームは屋根があり、空調も整うなど、屋内のような雰囲気なので安心して連れていけるのです。ただ、サッカーのゲームは屋外で行われるので、予定した日が暑かったり、突然雨が降ったりすることもあるので、なんとなく二の足を踏んでいました。でも今回は看護師さんがついてくれるので安心かなと思いました。

試合当日。家族とともに車椅子に乗ってスタジアムに到着したT君は、すでに腹痛の発作が始まっていたのか、少しつらそうな表情をしていました。それでも、今回は家族だけでなく看護師によるサポートを受けられることもあり、T君の夢へのチャレンジであるサッカー観戦は予定通りスタート。スタジアムの観客席では試合前からサポーターによる賑やかな応援が繰り広げられ、キックオフとなると盛り上がりは最高潮に…。その一方で、T君の様子は痛みや、嘔吐をもよおす場面もあって「このまま観戦を続けても大丈夫か!?」と不安に思うこともありました。それでも、「大好きなサッカーを観たい」「ギラヴァンツを応援したい」という本人の夢をかなえてあげたいと、看護師とお母様がT君の体をさすったり、声かけをしたりといった献身的な看護を続け、ついに試合終了の時を迎えることができたのです。

試合結果は1対1の引き分けで勝つことはできませんでしたが、屋外でのサッカー観戦という初めての体験をすることができたT君とその家族にとっては大きな自信につながったはずです。

─── 実際に、看護師によるサポート付きでサッカー観戦をしてみて、どんな感想を持たれましたか?

お母親:
実際に体験してみて、人手があるのは本当にありがたいですね。家族でお出かけするときは、どうしてもこの子に手がかかって自分が楽しむどころではなくなってしまうからです。

お父様:
試合終了までここで過ごせ、最後の花火を見ることができたのは本人の自信につながったかもしれません。ふだんはよくしゃべる明るい子なのですが、会場のアナウンスや音楽がうるさいこと、そして気温が高かったこともあったのでしょうか。腹痛の発作を起こしてしまい、看護師さんにもいろいろご面倒をかけたかなと思います。

お母親:
腹痛の発作が試合中も続いてサッカーどころではなくなってしまいました。ただ、看護師さんだと一般の人よりはるかに早く順応してくださるので、専門職が付いてくださる(※)のは、安心感が違うなと思いました。 ※CaNoWではお客様のご希望に合わせた最適なチームを組みますが、必ず看護師がつくというわけではありません。
家族写真

─── これからT君も成長して行動範囲が広がっていくと思います。

お父様: できるだけいろいろな経験をさせてあげたいと、これまでも飛行機に乗って沖縄に行ったり、新幹線で伊豆まで出かけたりもしました。実は、この5月にこの子が火曜中学校の修学旅行にも初めて参加させたのです。それまで親の付き添いなしで宿泊をしたことがなかったので、学校側と相談して看護の先生を付けてもらってチャレンジしました。結局、初日の宿泊先で体調を崩してしまって、私が奈良まで迎えに行くことになったのですが、これも一つのいい経験になったと思っています。 今後この子も上の学校に進んで行動範囲が広がっていくので、今回の経験も自立のきっかけとして生きてくるのではないかと期待しています。

※患者支援プロジェクトCaNoWとは

人生100年時代、2025年には全人口の約18%にあたる2179万人が後期高齢者に。さらに医療の発達により、さまざまな疾患を持ちながらも、その病と共生する人々が年々増加しています。

「CaNoW」は、病気や加齢などを理由に叶えられなかった「やりたいこと」の実現をサポート。これまでにも先行モニター企画として、「大好きなサッカーチームをスタジアムで応援したい」「病に倒れてから一度も行けていない職場へ、もう一度行きたい」「生まれ育った土地をもう一度観に行きたい 」などの願いを叶えてきました。

詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。

メルマガを登録して
最新情報を受け取る

    メルマガ登録をされる場合、エムスリー株式会社の『個人情報取り扱いについて』の内容に同意したものとします。