「医療もサービス業」女子医大 新浪教授、コロナ禍の一手

この記事は、2020年8月7日に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: 患者の願いを叶える『CaNoW』Vol. 28 「医療もサービス業」女子医大 新浪教授、コロナ禍の一手」のタイトルで掲載されたものです。

新浪 博士(にいなみ ひろし)先生

総病床数1,194。全国トップクラスの病床数を誇る東京女子医科大学病院。COVID-19拡大以降は、疑い患者専用病床として中央病棟4階44床を21床に、糖尿病センターをCOVID-19専用病棟として61床を28床に、重症患者のために救命ICU12床を6床と、COVID-19対応病床55床を確保。PCR検査は200~300件/日に体制を拡大し、東京都下の医療を守る砦のひとつとして日夜奮闘を続けています。一部報道では、看護師の退職問題なども取りざたされた同院ですが、その内部では医師と看護師が一枚岩となって、患者貢献を果たそうという取り組みが続いています。新浪博士先生率いる心臓血管外科病棟が全国に先駆けて導入した「オンライン面会システム」もそのひとつ。ここでは、日本のトップ心臓外科医の御一人である新浪先生がCOVID-19渦中で感じた医療の実情、そしてオンライン面会システムの意義についてお話を伺います。(当記事は全3回連載の2回目です。ぜひ初回も合わせてご覧ください。)

面会制限で“病は気から”実感

─── COVID-19拡大に伴うトリアージの徹底や、入院患者さん全例に対するPCR検査など、院内感染対策への強い思いをお聞かせいただきましたが、入院患者さんへの面会制限が続いているのもその影響でしょうか。

そうですね。患者さんのご家族にまでPCR検査を受けていただくわけにはいきませんから、現在も原則面会をご遠慮いただいています。緊急事態宣言が明けてから制限を緩めた施設もあると聞いていますが、当院ではそうした対応はしていません。

─── ご家族の面会制限があることで、入院患者さんの治療や回復に影響が出ることはありますか?

もちろんあるでしょう。「病は気から」という言葉もあるように、精神面での不安から不穏になる方もいらっしゃいます。また救急で運ばれてきた方などは、意識が戻った際にどうして病院にいるのか、と混乱が生じることがあります。こうした精神面のフォローに、「オンライン面会システム」が役立つのではないかと考えました。

オンライン面会システムとは

エムスリーの患者支援事業CaNoW(カナウ)とソニー株式会社の協業により、COVID-19に伴う面会制限への対応策として考案。ソニーのスマートフォンXperiaTM(エクスペリア)を用い、「誰でも簡単にワンタッチで操作ができる遠隔面会」を実現。

東京女子医科大学病院では、心臓血管外科病棟を中心に10台(5ペア)のXpeariaを導入。患者さんやご家族の希望に応じて貸与し、無料でオンライン面会を利用できます。

─── オンライン面会システムを実際に導入されてみていかがでしたか?

実際に活用してくれたのは病棟の看護師ですが、師長からは「患者さん以上に、ご家族から大変好評だった」と聞いています。入院中は、近くに医療従事者がついているため一緒に頑張っているという実感が得られますが、ご家族にはそれが見えません。術後どうしているのかなど、分かるだけでも安心していただけたようです。

─── 確かに、実際に画像で表情を見て、コミュニケーションを取ることは安心にも繋がりますよね。

通常、うちの病棟では入院から退院まで平均2週間程度ですが、コロナ禍でも入院期間が延びることなく皆さん回復されて退院できたのは、オンライン面会のような取り組みにより精神的なサポートができたことも関係しているのかもしれません。

また通常の面会の場合、何時から何時まで、という時間の制限がありますが、オンライン面会の場合は時間の制限がありません。朝の早い時間帯や夜でも面会ができるというフレキシビリティが魅力です。お忙しい方や、遠方の方にはとくに役立つでしょう。小さなお子さんの面会などもオンラインならば可能ですね。

─── 新浪先生はかねてより「医療もサービス業である」とのお考えをお持ちでいらっしゃいますが、このオンライン面会は医療サービスの一環として役立つでしょうか?

役立つでしょう。現在はCOVID-19の院内感染対策ということで面会を制限していますが、季節性インフルエンザの流行時期などを考えると、一過性のものではなく今後も継続利用するものとして検討できるように思います。

終末期医療など看取りの現場は別として、急性期の面会は「こういうものだ」として定着していく可能性もあるのではないでしょうか。今後、ワクチンが開発されるなどして、COVID-19を怖がる必要がなくなったとしても、新しいウイルスが出てくるでしょう。こうした状況がいつ起こっても対処できるようにしておくことが重要です。

オンライン面会システム、ICや院内遠隔診療にも応用可能?

新浪 博士(にいなみ ひろし)先生

─── Xperiaを用いたオンライン面会システムですが、今後はご家族へのインフォームドコンセント等にも使用できるのではないかとの期待があります

実際に運用するとなるとまだまだ課題があるかとは思いますが、オンライン面会システムを使用すれば、インフォームドコンセントの様子を動画として保存できるのが良いですね。これまでもアナログな方法で残してはいましたが、透明性を考えると動画で残るほうが双方にとって良いでしょう。

インフォームドコンセント以外では、院内での遠隔診療にも使えるのでは。たとえばCOVID-19の患者さんや疑い例の診療では、当然のことながら医師もフルPPEが必要で、これには時間も費用もかかります。そんなときに、患者さんの様子を見ながらお話を聞くなどして一時対応をすることで、実際に行ったほうがいいのか、行かずとも対処できそうか、などの判断ができるかもしれません。
COVID-19拡大下、東京都下の医療を守る砦のひとつとして奮闘の続く東京女子医大病院。感染対策・医療安全に対する強い信念をもち、現在でも面会制限が続く同院で導入された「オンライン面会システム」について心臓血管外科教授の新浪博士先生にお話を伺いました。次回はコロナ禍で得られた家族の時間や、COVID-19時代の医療についてのお考えを伺います。

新浪 博士(にいなみ ひろし)先生

【ご略歴】
新浪 博士(にいなみ ひろし)先生
東京女子医科大学病院 心臓血管外科教授

1962年神奈川県横浜市生まれ。群馬大学医学部卒業後、東京女子医科大学大学院修了。
東京女子医大附属日本心臓血圧研究所(現 心臓病センター)に入局し、米ウェインステート大学、豪アルフレッドホスピタル等に留学。
帰国後は順天堂大学医学部附属順天堂医院を経て埼玉医科学病院心臓血管外科教授。
2017年より現職。現在、国内外で年間約700症例の心臓血管外科手術に関わる、日本のトップ心臓外科医の一人。



※CaNoWとは病気や加齢などを理由に叶えられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクト。これまでに「大好きなサッカーチームをスタジアムで応援したい」「病に倒れてから一度も行けていない職場へ、もう一度行きたい」「生まれ育った土地をもう一度観に行きたい 」などの願いをサポートしてきました。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。

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