左足切断の女性。怖さ乗り越え、ダンスで自信を取り戻した!

この記事は、 2021年10月4日に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: 患者の願いを叶える『CaNoW』Vol. 44 左足切断の女性。怖さ乗り越え、ダンスで自信を取り戻した!」のタイトルで掲載されたものです。



軟骨肉腫で左足の末端を失い、義足を使用することになった金氏知江子さん。もともとダンスが好きだった金氏さんは、「義足になっても大好きなダンスを踊りたい」という夢の実現をCaNoW(※)に応募されました。そこで、ダンス専用の義足を作成し、東京パラリンピック開会式に出演されたダンサー・大前光市さんと一緒に踊る計画がスタート。前回は、準備段階の様子をレポートしました。今回は、夢が実現するまでの道のりをお伝えします。

大前光市さんと一緒に踊る金氏知江子さん

「切断した足は意識して使うように」プロからの指南

「憧れの義足ダンサー、大前さんからダンスのレッスンを受けたい!」軟骨肉腫によって義足を着けることになった金氏さんの夢を叶える日がやってきました。まずはオンラインレッスンを2回重ね、最後に対面レッスンを行う計画です。レッスンを受ける中で義足も改良し、金氏さんがより自由に、生き生きと踊れるように工夫を重ねました。

<オンラインレッスン1回目>
最初に金氏さんと大前さんがオンラインで挨拶を交わすと、金氏さんの顔から笑顔がこぼれます。

大前さんはダンスをする前の準備として、金氏さんの足の可動域や痛み具合、歩き方の様子を確認。また、装具についても義足ダンサーならではの視点で鋭いチェックが入ります。この時点では、左膝下から足の指あたりまでの義足が仮完成していましたが、「膝下までの長さは金氏さんには必要ないのでは」と大前さんは提案しました。

そこで、CaNoWスタッフは義肢装具士・臼井二美男さんに相談。その結果、膝下からくるぶしまでの部分をカットし、くるぶしから末端部分の装具に変更となりました。
改良したダンス用義足
大前さんのアドバイスを受けて改良したダンス用義足
大前さんは、体の動かし方についてもアドバイス。切断した左足は、かばって使わなくなる傾向があるため、普段から意識して使っていくことが大切だと伝えます。
また、固くなりやすい太もも周囲は、前面後面、そして側面と全方向に対してストレッチや筋力訓練を行うこと。背骨はしなやかな動きが出るように、胸を前に出したり、引いたりするなど、具体的に指導されました。

切断した左足が痛む。「幻肢痛」を乗り越えて踊る!

<オンラインレッスン2回目>
ダンスのオンラインレッスン
オンラインレッスンでもリアル同様の熱量が伝わる
約1か月ぶりのオンラインレッスン。金氏さんはこの日までに、前回の動画を見ながら復習をしていたそうです。ただ、時々、切断して失っている左足に痺れや痛みを感じることがあったと打ち明けました。

すると、大前さんは「それは幻肢痛(げんしつう)ですよ」と即答。幻肢痛とは、切断した部分が今でもあるような感覚がして、痛みを伴うもの。大前さん自身、膝下の切断から約10年経った今でも時々あると言います。
ダンスだけではなく、義足経験者としての知識や経験も教えてもらうことができ、金氏さんの安心感も増していきます。

その後、レッスンがスタート。曲に合わせて詳細な動きを覚えていきます。まだ義足を着けて踊ることに慣れない金氏さんに、大前さんはわかりやすくアドバイスされました。例えば、体を回転させると目が回りそうになる場合、「1点を見つめると体がブレにくい」「背骨は茶柱を立てるように」といった具合です。動きにメリハリをつけたり、体幹の角度を整えたり、1回目のレッスン同様に熱気あふれる時間となりました。

憧れの義足ダンサーと鏡に並ぶ日が来るなんて

<本番:いよいよ対面レッスン!>
2回目のオンラインレッスンから数週間後、いよいよ大前さんと直接対面した金氏さん。レッスンも集大成に入り、赤い衣装を身にまとい気合いが入ります。

早速2人ならんで鏡越しにレッスンを開始。リアルな現場で指導が入り、心地よい緊張感と、ただただダンスに没頭する時間が流れます。オンラインレッスンの頃に比べて、体を動かすことに不安が減ってきた様子の金氏さん。間違えた部分も「ここ、もう1回踊ってみたいです!」と自ら志願する場面も見られました。
新しい義足を着け、対面レッスン
新しい義足を着け、いよいよ対面レッスン!

「本番が終わっても、もっともっと踊っていたかった」

大前さんとのダンスの時間はあっという間に流れていきました。
夢が叶った金氏さんはこう言います。

「今まで受験勉強などで頑張ったことはありましたが、自らの意志でここまで頑張ったのは初めてです。本番が終わっても、もっともっと踊っていたかった」
とキラキラと瞳を輝かせて語ります。さらに金氏さんの想いは止まりません。

「実は、2016年のリオ・パラリンピックの閉会式で、大前さんのダンスを見て感動していました。当時の私は腫瘍が見つかり、どんどん大きくなって不安が積もっている時期でした。どうしたらいいのか悩んでいましたが、大前さんが大舞台で自由に美しく踊る姿を見て、とても感動したことを覚えています。そんな大前さんから、レッスンを3回もして頂き本当に嬉しかったです!」
と目を潤ませて語りました。
義足の左足を魅せる振り付け
義足の左足を魅せる振り付けのシーン
大前さんは今回の企画を振り返り、こう語ります。
「振り付けを考える時、わざと左足を多く使うようにしました。左足を使うことは怖いと思います。怪我をしたらどうしようとか、不安になる気持ちはすごく分かります。
でも、自分が思っているより体って使えるんです。怖がらずに動いてみると、動く喜びを感じるし、動かしていいんだって自信が持てるようになります。すると、心や体が健康になって生きている喜びを感じていくと思うんです」
大前さんのサイン入り色紙を金氏さんにプレゼント
大前さんから金氏さんにサイン入り色紙をプレゼント。
今回、勇気を持ってCaNoWに応募してくださった金氏さん。企画後は、大前さんと一緒に踊れた喜びはもちろん、「自分はダンスができた」という自信がつき、心から笑顔が出るようになったと言います。左足を使うのが怖い…と思っていた金氏さんが叶えた思いは、人生の大きな一歩となったのではないでしょうか。
※CaNoWとは、病気や障がいを理由にかなえられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクトで、企業やその従業員の寄付やサポートで患者さんの願いを叶えていきます。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。

このプロジェクトには、CaNoWの理念に共感したノバルティス ファーマ(株)の従業員が寄付しています。

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