仲川さんは、人工呼吸器を使用する医療的ケアが必要な双子のお子さんを育てています。CaNoWと共に実現した東京ディズニーランドへの旅を通じて、日常の小さな一歩がどのように次の夢へと繋がっていくか、率直な言葉で語ってくれました。
諦めていた夢が動き出した日――医療的ケア児を育てる母が語る、声を上げることの力

- お名前:
- 仲川 瑠衣子 さん
- 疾患名:
- 脊髄性筋萎縮症 I型
夢の国へ、諦めていた旅の始まり
お子さんたちが人工呼吸器を使用していると、「いつかどこかへ行きたい」という気持ちはあっても、現実の壁はいくつも重なります。ヘルパーの都合、介護タクシーの手配、電源の確保、バリアフリーの状況確認など、近場に出かけるだけでも、事前に何度も現地を訪れて確認を重ねるほどの準備が必要です。
そんな中、ネットでさまざまな情報を調べていた仲川さんの目に、CaNoWの記事が飛び込んできました。
「『行けたらいいね』くらいに思っていたんです。人手も必要ですし、医療ケアや移動の心配もあり、どうしても『いつか行ければ……』と先延ばしになってしまっていたんですよね。 でも、こうして夢を叶えてくれる場所があるのなら、『もしかしたら遠出も夢じゃないのかもしれない』と思えてきました」
ディズニーランドは、仲川さんにとって特別な場所でした。初めてパレードを見た瞬間が今でも忘れられない。だからこそ、その感動をお子さんたちにも見せてあげたい。その思いがずっと心の中にありながら、現実的な壁の前に「もう本当に諦めていた」と振り返ります。CaNoWへの相談が、その諦めをゆっくりと希望へと変えていきました。
着いた瞬間、気持ちがふわっと軽くなった
実際にディズニーランドに到着したとき、仲川さんの胸に広がったのは、安堵と夢見心地が混ざり合った不思議な感覚でした。
「『本当に行けたんだ』と実感した瞬間、気持ちがふわっと軽くなって。『夢が叶ったんだな』と、なんだか不思議な心地でしたね。 着くまではずっと不安だったので、まずは無事に現地に着けたという安心感が大きかったです。あとは皆さんのサポートのおかげですね。事前に綿密な打ち合わせを重ねていただいたおかげで、当日は本当に手際よく進んで、『あ、焦らなくてもよかったんだな』と思えました」
一方で、現地でのご自身を振り返り、「子どもたちにとにかく楽しんでほしい」という親心から気を張る部分もあったと話します。万が一何かあったらどう対応するかという不安は常に頭をよぎっていましたが、訪問看護のスタッフがそばにいてくれたことで大きな安心感が生まれ、心強かったそうです。
また、パレードを見ていたお子さんたちの表情は今でも忘れられないと言います。
「2人の顔は忘れられないです。もう本当に、あのパレードを見ていた時の瞬間とか、すごい目をキラキラさせていたので」
最初はパレードだけ見られればと思っていたのに、お子さんたちが思った以上に楽しんでくれているのを見て、「あれも見たい、これも見たい」とわがままになってしまったと笑います。その欲が出てきたこと自体が、安心感の中から生まれた自然な気持ちだったと、仲川さんは温かく受け取っています。
伝えることの積み重ね、見えない壁と向き合う日々
医療的ケアが必要なお子さんの外出や通学のためには、事前の準備だけでなく、長い年月をかけた周囲への説明や協力、理解を深めてもらうことも必要な場合があります。 仲川さんは地元の小学校に通うお子さんたちのために、年に2回、先生方に向けて呼吸器や機械の説明、非常時の対応、バリアフリーの必要性などを丁寧に伝え続けてきました。
「入学当初は学校関係者全員が『?』って感じで、全然分からない雰囲気でしたが、今5年目で、やっと質問してくれるようになりました。今まで『ちょっと聞いていいですか?』と聞かれることが無かったので質問をしてくれることがすごく嬉しいです。それによって改善できたり、『何が分からないのかが、分かっていなかったんだな』と気づけたりもしました」
車椅子の幅、段差、スロープの有無。仲川さんにとっては当たり前に気にかけることでも、医療的ケアを知らない人には想像もつかないことが多くあります。悪意があるわけではなく、ただ知らないだけ。だからこそ、伝え続けることが大切だと仲川さんは言います。
その積み重ねが実を結び、今では先生たちが自ら「廊下の幅は大丈夫か」「エレベーターはどうか」と考えてくれるようになりました。来年の修学旅行に向けて、教頭先生が積極的に動いてくれているのも、5年間の対話の積み重ねがあってこそです。
「『自分でやった方が早い』とか、いろいろ考えることもあったんですけど、周囲に伝えたり、声を上げると良い方向に変わったりしますね」
次の夢は、もう決まっている
ディズニーランドの経験は、仲川さん自身にも大きな自信をもたらしました。新幹線に乗れた、遠出ができた、ひとつひとつクリアするたびに、「私にもできる」という感覚が積み重なっていきました。
「ディズニーランドに行けたことがすごく自信に繋がりましたし、でも、今後、もうちょっと私も楽しめる余裕ができたらいいなっていうのはあります」
お子さんたちも、あの日の記憶を胸に持ち続けています。ディズニーのキャラクターが出てくると目を輝かせ、「また行きたい」と答えてくれます。そしてYouTubeで自分から動画を探しては、次に行きたい場所をアピールするようになりました。次の目標はUSJだと言います。
「『ディズニーランドよりは近いもんね』といつもみんなで話しています。それを叶えられるように今は頑張ってます」
同じような状況にあるご家族へ向けて、仲川さんはこんな言葉を贈ります。
「どこまで言っていいのか、何を手伝ってもらえるのか分からなくて、今までは『もういいや』って諦めちゃうことが多かったんです。『自分でやった方が早い』と思ったりもして。 でも、思い切って伝えてみたら意外とよかったので、『声を上げてみるのもいいな』と思えました」
企画を終えて
【CaNoWより】諦めていた夢が、一歩踏み出すことで動き始めました。CaNoWとしても大切な一歩をサポートさせていただけたことに感謝しています。 仲川さんの言葉は、同じような環境にいらっしゃる方や、一歩を踏み出すことに悩んだり、迷ったりしている誰かへの、静かで力強いエールとなることでしょう。これからの挑戦も応援しています。