宮城県にお住いの守屋さんは当時75歳。押し寄せる津波に自宅を流されてしまいました。
デイサービスに出かけていたために、一命を取り留めることができた守屋さんですが、その後しばらくは仮設住宅での生活を余儀なくされました。
その後、県内の高齢者住宅に移った守屋さんですが…2019年、守屋さんを3つの病魔が襲います。腹部大動脈りゅう、狭心症、そして胃がん。
無事にすべての手術を終え、持ち前のパワーで日常生活を取り戻した守屋さん。現在は『3度目の人生』を歩んでいる、と語ります。
そんな守屋さんの願いは「もう一度大好きだった旅行にでかけること」。
生活面では自立している守屋さんですが、足腰の痛みやしびれのために、室内では杖を使って歩行。外出時には車椅子を使用しているほか、高血圧や不整脈の持病もあり、健康への不安は尽きません。
「1人での旅行は難しいか…」とあきらめかけていたときに、“患者さんの願いを叶えるプロジェクトCaNoW”の存在を知り、応募を決意しました。
────── そんな守屋さんの夢を叶えたい!!! ──────
多くの持病をお持ちの守屋さんのため、CaNoWスタッフは旅の協力医師としてトラベルドクターの伊藤先生に協力を打診。CaNoWと伊藤先生のタッグにより、守屋さんの旅行計画がスタートしました。 「長時間の歩行は難しいので、移動用の車いすを用意しましょう!」「車椅子で飛行機に乗るために、航空会社に協力をお願いしましょう!」
「飛行機のなかでは、足元が広く、出入りしやすい前方の席がいいですね」
「宿泊施設はどうしましょう?」
「周囲に気を遣わず入浴できるよう、お部屋に大きなお風呂があるといいですね」
「そういえば、食が細いって…刻み食なら大丈夫かな?」
守屋さんが、スムーズに旅行できるよう、あらゆる場面を想定しながらプランニングをすすめるCaNoWスタッフと伊藤先生。
「安全な旅行」であることを最優先に、主治医の先生からいただいたご病気の情報などもしっかり共有して旅の計画を練ります。
最終的に、現地で体調を崩してしまったときのための協力病院として手上げをしてくださった「飯塚病院(福岡県飯塚市)」を起点に、福岡市内を巡る旅行に決定!さぁ、どんなたびになるのでしょうか…!?
【1日目】
2020年2月9日 宮城県石巻市 伊藤先生とCaNoWスタッフが向かったのは、守屋さんがお住まいの高齢者住宅。
「ついに旅行の日が来ましたね!」と伊藤先生の呼びかけに、嬉しそうな表情を浮かべる守屋さん。ご応募から旅の実現まで数か月。この日を心待ちにしてくださっていたようです。 最寄りのバス停から高速バスに乗車し、仙台駅へ。仙台駅からはタクシーに乗り換え、一路仙台空港へ。
仙台空港では、車椅子専用のチェックインカウンターへ。ここで空港専用の車椅子に乗り換えます。 2時間15分のフライトを終え、無事に福岡空港へ到着!ここからはレンタカーに乗り換え、本日の宿泊先 脇田温泉「楠水閣」へ向かいます。ホテルスタッフやおかみさんにお出迎えいただき、専用の車椅子に乗り換え、広い館内を案内していただきました。 お部屋に入って一息ついたら、お待ちかねのお風呂へ…今回のお部屋は、なんと豪華 露天風呂付!他のお客様の視線を気にすることなく、守屋さんのペースでゆっくりと入浴ができます。
足腰が弱いため浴槽に浸かることが難しく、普段はシャワーのみ…という守屋さん。約8年ぶりの温泉に、至福の表情… お風呂が済んだら次のお楽しみ、夕食のお時間です!季節の食材をふんだんに取り入れた、色彩豊かな懐石料理に箸が止まりません… 普段は食が細く、お一人で食事をするためお酒もあまり召し上がらないという守屋さんも、この日ばかりは「乾杯!」と、朗らかな笑顔。楽しい会話で、福岡の夜が更けていきました…
【2日目】
伊藤先生による朝の体調チェックを終えた守屋さん。「すごくいい感じ!」という伊藤先生の言葉に背中を押され、大宰府観光へと出かけました。
最初は車椅子に乗っていた守屋さんですが…「歩いてみる!」と自ら車椅子を降りました。すると…
なんと!普段は杖をついて少し歩くのがやっと…というのが嘘のように、どんどん進んでいきます。旅行だからこその高揚感が、体調も気分も上向きにしてくれるのでしょう。自身の力で参道や太鼓橋を抜けて、太宰府天満宮まで到着しました。 旅の最後に、守屋さんの好物「ぜんざい」をみんなでいただきます。一人暮らしではなかなか食べることがない、というぜんざいのお味は… 楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、名残惜しい気持ちで帰りの飛行機へ搭乗。夕日をバッグに、記念撮影です。 「今回の旅で自信がついた」と話す守屋さん。次の目標は…「東京オリンピック!」
キラキラした表情で次の願いを語ってくれました。
▼願い実現のキーポイント
守屋さんの日頃の病状を情報提供してくださった主治医の先生。現地での受け皿として連携を申し出て下さった飯塚病院の皆さま。そして旅に同行下さったトラベルドクターの伊藤先生。ご協力、どうもありがとうございました!