■ ハワイのサンセットが見たい
Yさんの願いは、「家族と一緒に見たハワイのサンセットや虹をもう一度見たいです。腺様嚢胞がんを患い、今はほとんど家の中で過ごしています。残された時間も限られてきましたが、家に居ながらにして、実際に現地に行ったかのような体験ができたら嬉しいです」とのこと。制限のある生活の中でも、少しでも思い出の景色を楽しみたいと語ります。■ 病気発覚から、闘病、願いが叶うまで
2015年12月に腺様嚢胞ガンと診断されてから、入退院を繰り返してきたYさん。放射線治療を開始するも、医師からは「直すための手術ではなく、進行を遅らせるための手術」と宣言されていました。
2017年6月には、治療を続けながら、家族や医療従事者の協力によって家族でハワイ旅行を決行。帰国後、娘に自分がガンであることを告知しました。骨転移、嗄声、と徐々に病気が進行し、2020年11月には在宅医療に切り替えています。
また、今回の企画は12月を予定していましたが、Yさんが10月~11月に入退院を繰り返す事態に。企画自体が行えるかどうか懸念されましたが、なんとか退院が可能に。Yさんの希望通り、自宅で実現できる運びになりました。
―企画当日。CaNoWスタッフが自宅を訪れた際は、痰貯留と咳き込みの症状があり呼吸苦を確認します。しかし、体調をみながら企画が徐々にスタートすると、自然と症状が治まっていくYさん。VR視聴時は症状もは落ち着いており、家族とともに思い出のハワイや夫婦岩の映像を楽しむことができました。
■ 気持ちはハワイへ、旅の準備を整えて
今回は少しでもハワイ気分を味わって頂けるよう、様々なプレゼントを用意。まずは、ハワイの象徴でもあるレイです。CaNoWスタッフからYさん、旦那さん、娘さんにレイが手渡され、各々が気に入った色を首にかけます。




■ 初めてのVR体験、ハワイを存分に味う!
今回、Yさんの願いを叶えるために使用したのはVR。VRとは、バーチャルリアリティーとも呼ばれ、仮想空間を楽しむものです。頭に専用のゴーグルを装着し、ヘッドディスプレイを装着すると、仮想の世界が広がります。コントローラーで位置や方向など、自分の動きが反映。CaNowスタッフは、JTBハワイ支店に動画や360°映像の撮影を依頼し、思い出の景色をリアルに感じてもらえるよう手配しました。また、Yさん家族は今回の企画で初めてVRを体験。スタッフが操作について説明し、まずは娘さんから専用のゴーグルを装着すると…。
「うわぁ、すごい!」と歓声を上げる娘さん。突如、視界に飛び込んできたワイキキのサンセットビーチ!水平線がキラキラと輝き、水遊びをする人や、のんびりビーチを散歩する人、誰もが自由を満喫しているような景色が広がります。



CaNoWスタッフは、録画したハワイの情景だけでなく、リアルタイムで夕日が沈む様子もお見せした方がより臨場感が増すと判断。当日は、家族の思い出の地でもある三重県の夫婦岩にいるスタッフと中継を結びました。


夫婦岩にいるスタッフから、娘さんに本を届けると歓喜の声が沸き上がりました。




娘さんが作った自由研究は、これから先も胸を張って色々な人に見せて欲しいと伝えます。
■ Yさんの本音

「2015年にガンを発症して今まで様々な治療を行ってきました。副作用によって痛み止めを飲んでも熱が出たり、突然痛みが出てきたりと、精神的にも耐えられないほど辛いも味わってきました。
生きていても楽しいことはないし、病気は悪くなる一方だし、コロナもあるし、何もいいことがない。目標も希望もない。
それでも救いになったのは家族の存在はもちろん、友人が送ってくれた写真です。
夕日や朝日、山の中で野鳥が飛ぶ姿、美しい花。肉眼では見えない月のクレーターや、絶景を映し出す写真の数々。大袈裟かもしれませんが、一枚一枚の写真から、ものすごくパワーをもらったんですよね。
次第に、自分でも写真を撮ってみようかと思えるまでに。空や景色を眺めては、どのアングルで写真を撮ろうか、そんなことを考える瞬間だけは夢をみることができる。5分だけでも病気のことが忘れられるんです。
自分で写真を撮りはじめると、「朝焼けでも見に行くか」と、旦那が夫婦岩まで連れて行ってくれたこともありました。朝4時に現地に着き、家族で日が昇る瞬間に遭遇できたのは嬉しかったですね。
2017年には骨転移していましたが、たくさんの方の協力があって、抗がん剤をお休みしてハワイに旅行に行きました。そのときの夕焼けの美しさは今でも目に焼き付いています。
もう、自分が現地に行けないことはどこかで割り切っているのかもしれません。 それなら、テレビでもドローンでも現代の力を使って、直接足を運ぶよりもっとすごい景色が見られるかもしれない。きっと楽しいことが見つかるはず、気持ちが変化してきました。
また、娘の自由研究は、はじめは家族だけで読むつもりでしたが、地元のテレビ局から取材を受けたり、北海道の養護教諭からは問い合わせが来たりと、予想外のことが起きました。
しかし、親目線では大したことないと思っていた娘の作品が、もしかしたら誰かの傷を癒すものになるかもしれない。そう考えてから、作品をコピーして学校に渡したり、メディアの取材も積極的に受けるようになりました。今回、CaNowに応募したのも、できれば娘の自由研究が一冊の本になってたくさんの人たちに届けられたらという想いも密かにあります。
ただ、それは実現してもしなくても、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいなと思っています。

家に居ながらハワイのサンセットや、リアルタイムで夫婦岩を楽しめたYさんたち。
今回の企画を振り返り、笑顔で感想を述べるYさん家族。
最後は、娘さんが「またハワイの景色をもう一度見たい!」と力強くボードに願いを書いて、笑顔で終わりました。
