
三宅紫穂さんは小学4年生の女の子。母親の円夏さんが初めて異常に気づいたのは3歳の時でした。
「道路で歩いていて転ぶと、たんこぶが引かなくて」(円夏さん)
10件以上の病院を回り、ようやく「神経芽腫」と診断されました。神経芽腫は、神経の細胞にできる小児がんの一種です。
治療をスタートし、1年ほどで寛解しましたが、4年10カ月後に再発。さらに再々発しました。現在は月に5日入院して抗がん剤治療を受けているほか、通院で輸血なども受けています。
こうした体調面とは別に、円夏さんはある心配を抱えていました。
紫穂さんのがんは頭蓋骨にあり、陽子線治療を受けた影響で生涯、発毛が望めなくなったのです。そこで、オーダーメイドのウィッグをあつらえたのですが、サイズや素材が合わなかったのか、紫穂さんはあまり気が進みません。でも、ウィッグをかぶらないことで、まわりから心無い言葉を投げかけられることもあり、悲しい思いをしてきたそうです。
つらい思いをしているのは、紫穂さんだけではありません。姉の夏葵(なつき)さんも、紫穂さんが置かれた状況に悲しみ、涙を流してきました。かと思えば、夏葵さんがおしゃれをすると、今度は紫穂さんが「いいな。私は髪の毛がないし、病気だからできないんだよ」と泣いてしまうことも……。
姉妹のやりとりに胸を痛めた円夏さん、「おしゃれをしたいという紫穂の願いと、妹に遠慮しておしゃれができない夏葵の願いを叶えてあげたい」と、CaNoWにご相談くださいました。

■ かわいいアレンジで、ウィッグのおしゃれも楽しもう
そこでCaNoWでは、プロの協力のもとで姉妹がおしゃれを楽しみ、写真撮影する企画をご提案しました。紫穂さんには、手持ちのウィッグをかわいらしくアレンジし、ウィッグを使ったおしゃれも楽しんでもらえる機会を目指します。
じつは今回の相談を受けた際、CaNoWスタッフが感じたのは「アピアランスケア」の重要性でした。アピアランスケアとは、脱毛や爪、皮膚の変色など、がんによる外見の変化をケアすることです。外見の変化そのものだけでなく、それにより引き起こされる心理的苦痛や社会的問題の軽減も含みます。大人の患者さんに対しては数年前から広まっていますが、子どものアピアランスケアは認知度が低く、三宅さん家族もこの言葉を知りませんでした。
CaNoWでは、今回の企画が思い出作りにとどまらず、紫穂さんの心のケアにもつながることを目指しました。
■ プロとのミーティングで、希望の髪形や服装を伝える
CaNoWスタッフは、プロのヘアメイクとスタイリストに依頼。三宅さんご家族とのオンラインミーティングの段階から参加してもらいました。
ヘアメイクからは、ウィッグのアレンジのポイントとして、「長時間、髪形を維持しやすく、ウィッグとわかりづらいこと」が挙げられました。例えばお団子ヘアなどのアップヘアは、違和感が出やすいのだそうです。こうしたウィッグの特徴を踏まえながら、紫穂さんの望む髪型とすり合わせていきました。
衣装は、子ども用ファッション雑誌を参考に、スタイリストが姉妹の好きなテイストを聞き取りながら、3パターンを用意することになりました。
すると、ミーティングの段階から姉妹にはある変化が見られたようです。円夏さんはこう語ります。
「初めはぼんやりしたイメージしかなかったようですが、実際に衣装の提案をもらっているうちに『言っていいのかな』と思ったみたいで、自分の希望を言うようになりました」
髪がないからとおしゃれを躊躇していた紫穂さんも、「自分のしたいおしゃれができる」と、内面から変わっていったことがうかがえます。
■ ハート形の三つ編みを入れて、人気タレントヘアに大変身
撮影当日。神奈川県横浜市にある「スタジオキャラット」に、ヘアメイク、スタイリストと三宅さん家族が集合しました。
まずはメイクルームで、ヘアアレンジをスタート。事前のミーティングで姉妹からは、「タレントの藤田ニコルのような、ハート型の三つ編みを入れたい!」との要望がありました。それが今、プロの手で実現されていきます。
最初は緊張ぎみの2人でしたが、「かわいい」と声をかけられると、鏡を見て嬉しそうにはにかむ姿も。
浴衣に着替えてスタジオ入り。カメラマンのリクエストに応えて2人で見つめ合ったり、ほほに手を当てたりと、次々にポーズを変えていきます。
「にっこりー! いいねー」
カメラマンから声をかけられて、次第にやわらかな表情を見せてくれました。そんな姿を、嬉しそうに見つめるご両親。スタイリストと顔を見合わせて、「うんうん」と満足そうにうなずく場面もありました。


浴衣の次は、ゴージャスなお姫様風ドレス、そして最後はカジュアルファッションに着替えて撮影を行いました。服装に合わせて髪飾りをヘアピンに変えるなどのアレンジも加えます。撮影した写真は、後日アルバムにしてご家族に贈呈しました。
最初のミーティングでは、ウィッグを嫌がる様子だった紫穂さん。それでも撮影当日は、髪型を気に入ったのか、ウィッグを外したいとは一度も言いませんでした。


撮影後、紫穂さんは「鏡を見て『これ誰かな?』って思ったら自分だった!」と、かわいらしい感想を聞かせてくれました。円夏さんも、「なかなか選んであげられないような色やデザインにも挑戦できて、2人はすごく楽しそうでした。私も嬉しかったです」と話しました。

今回の撮影会では、闘病を境に家中で曇りがちだったおしゃれへの意欲を、存分に叶えていただいたようでした。紫穂さんとご家族の笑顔からは、闘病中であってもその人らしいおしゃれを楽しむことが、気持ちを前向きにしてくれると教えられます。