「ずっと好きだった」元看護師の車いす妻、夫と叶えた願い

この記事は、2020年3月2日に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: 患者の願いを叶える『CaNoW』Vol. 15 「ずっと好きだった」元看護師の車いす妻、夫と叶えた願い」のタイトルで掲載されたものです。




「麻酔から目が覚めたら足が動かなくなっていたんです。」看護師として働いていた病院で受けた、子宮腺筋症の手術後に、右下肢不全麻痺を発症した遥花さん(仮名)。現在はリハビリを継続しながら、車いすと松葉杖を使って生活をしています。そんな遥花さんの願いは、2年前に結婚した夫の和也さん(仮名)と、フォトウェディングをすること。CaNoW※による、遥花さんの願い支援プロジェクトに密着しました。

「ずっと好きだった」30年越しの一途な思い実り…

山口県内のとある定時制高校で、先輩と後輩として出会った遥花さんと和也さん。一度は交際するも自然消滅してしまったお2人ですが、和也さんは「ずっと好きだった」と、一途な思いを抱き続けていたそう。それから約30年後。互いに大人になり自立した生活を送る中で、ふと手にした同窓生名簿。遥花さんからの連絡で、約30年ぶりの再会を果たした2人の距離は一気に縮まり、生涯のパートナーとしてともに歩むことを決めたのです。

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しかし。結婚の前年には子宮腺筋症・右下肢麻痺を発症していた遥花さん。入籍はしたものの「体調も優れず、結婚式らしいことは何もできなかった」と語ります。辛い時期を支えてくれた和也さんとの思い出を残したい…けれど、結婚式や披露宴には体力・体調面での不安が残る。そこで、遥花さんが選んだのが「フォトウェディング」でした。

最小限の負担で、美しい思い出を…フォトウェディングとは

フォトウェディングとは…披露宴や結婚式はせずに、写真を撮影することで結婚の思い出を残そうというもの。事前の打ち合わせにかかる時間や、招待客のしがらみなど“結婚式にまつわる煩わしさ”を解決できるほか、予算を大幅に抑えつつ「花嫁姿を両親に見せてあげたい」「2人の思い出をしっかり残したい」などのニーズを満たす、新しい結婚式の形として注目を集めています。

多忙なビジネスパーソンや、合理的でシンプルな形を好むカップルを中心に広がりを見せるフォトウェディングは医師のライフスタイルにもフィット。実際にフォトウェディングを経験された医師からは「多忙な医師という職業にこそおすすめ」「新郎・新婦の準備にかかる負担の少なさはもちろん、親族などゲストの手間もありませんので、現代に合っているカタチだと感じた。」(前編参照)とのコメントが。

忙しい人々にフィットする形態であるのと同時に、招待客を意識せずに自分たちのペースで思い出を残すことができるフォトウェディングは、体力・体調に不安を抱える人々にとっても、有効な選択肢。今回、右下肢麻痺のため長時間の立位を保つことが難しい遥花さんも、和也さんに見守られながらフォトウェディングに挑みました。

望みは「健常な方と同じように」特製補助具で立位をサポート

フォトウェディングに挑む遥花さんの望みは「和装での写真を、健常な方と同じように残したい」というもの。比較的容易に着脱ができる洋装とは異なり、和装の着付けには立位の保持が必要です。そこで今回用意したのは、自転車のサドルを椅子と組み合わせて高さを出した特製補助具。これにより、座ったままで立位に近い姿勢を保持しながらの着付けが可能となりました。遥花さんからも「これはいいね」とのコメントが。

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特製補助具による着付けとメイクアップが完了し、いつも以上に美しく変身した遥花さん。

遥花さん「今日は『きれいだよ』って言ってくれるんじゃろ?」
和也さん「……濃い!」(照れながら)

と、微笑ましいやり取りを楽しみながら、介護タクシーと車椅子で撮影地である大仙公園(大阪府)へ移動。遥花さんの体力・体調と相談して休憩を挟みながら、少しずつ撮影を進めました。そして出来上がった二人のベストショットがこちら。

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雲ひとつなく晴れ渡る秋空の下、健常な方と同じように華麗な和装に身を包み、幸せいっぱいの表情で未来を見つめるお二人の姿。和装での思い出を残した後には、スタジオに移動しウェディングドレスのお写真を撮影。遥花さんからは「とてもとても楽しく、思い出に残る一日になりました」と、とびっきりの笑顔がこぼれていました。

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最後にお2人からこんなコメントをいただきました。

CaNoW_遥香さん
遥香さん

たくさんの会話を通してスタッフの方の心暖まる対応に感謝しています。私が願うように和服で、屋外で、きれいな景色を堪能しながら景色と共に写真に収まりたい、夢が叶いました。

健常者にとっては「これくらいできるでしょう、動けるでしょう」ということが、障害を持つ者、病弱なものにはハードルが高いものです。今一番やりたいことを叶えていただき本当にありがとうございました。

CaNoW_和也さん
和也さん

妻の夢を叶えてくださりありがとうございました。この年でフォトウェディングなんて恥ずかしい…と思いましたが、事前打ち合わせ、衣装選びと進んで行くうちに本当に来る時が来るんだ!と覚悟を決めて撮影に臨みました。車椅子での撮影、移動ということで介護タクシーから、撮影でのブーケの用意と決め細やかな対応をしていただきありがとうございました。良い思い出ができました。本当にありがとうございました。

遥花さん、和也さん、末永くお幸せに!

※CaNoWとは病気や加齢などを理由に叶えられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクト。これまでに「大好きなサッカーチームをスタジアムで応援したい」「病に倒れてから一度も行けていない職場へ、もう一度行きたい」「生まれ育った土地をもう一度観に行きたい 」などの願いをサポートしてきました。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。

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