
「コロナ禍によって家族と会えなくなって不安だ」「自由に外に出られなくてストレスがたまる……」株式会社NTTドコモ(以下ドコモ)、ソニー株式会社(以下ソニー)、エムスリー株式会社(以下エムスリー)の3社は現在、合同で新型コロナウイルス感染症対策で面会や外出を制限されている患者さんやそのご家族を対象に、オンライン面会やVR・ARを使用したコミュニケーション、外出体験システムの提供に向けた協業の検討を進めています(詳細はプレスリリース参照)。今回は、実用化を前に実施された、千葉リハビリテーションセンターでのトライアルの模様をレポート。前編のオンライン面会に続き、後編ではAR体験についてお伝えします。
ARで病室が水族館に!小学生患者さんが体験
ARとは、「拡張現実感(Augmented Reality)」のこと。スマートフォンや専用のゴーグルを用い、実際に見えている景色や地形の中に、さらにバーチャルな情報を加える技術のことを指します。
トライアルのために用意したのは、専用のグラスを掛けることで、まるで病室が水族館になったかのように、たくさんの海の生き物が発見できるお子様向けのAR。さらに、携帯端末を操作することで魚にエサをあげたり、キャラクターとボール遊びをしたりなど、エンタテイメント性も十分。コロナ禍で外出のままならない入院中のお子様に対し、日々の楽しさを提供し、QOLの向上に繋げたいという狙いがあります。
今回は、千葉リハビリテーションセンターに入院中の、小学生患者さんを対象にトライアルを実施。早速子どもたちに専用グラスを装着してもらうと……。



遊びを通じてQOL向上、リハビリ応用の可能性も
小学生患者さんたちのAR体験を終え、ソニー、エムスリーの担当者に現在の想いや今後の展望について伺いました。ソニー株式会社 相見猛さん
もともと大人向けのエンターテインメントを楽しむARはありましたが、今回は病院で入院しているお子様向けの3Dアプリケーション(AR)ということで、どんな反応をしてくださるのか楽しみにしていました。
お子様が楽しむためのARですが、なにかしらのご病気をお持ちで入院中ということを念頭に置き、あまり動き回らなくても楽しめるコンテンツを…ということを意識しています。たとえば、『自分が水槽の中にいて魚を見ている設定で、目の前の景色だけに留まらず、可愛いキャラクターが360度の視野で楽しめる』『手元の操作だけでエサやり体験や、ボール遊びができる』といった工夫がそうです。
今回のトライアルを通じ、より子どもにも分かりやすいコンテンツに修正する必要性などの課題を見つけることができました。さらに操作しやすく、楽しめるように、ブラッシュアップしていければと考えています。

コロナ禍で外出制限が設けられるなか、こうした“遊び”を通じてQOLを高められるような取り組みの必要性をより感じることができました、今回のトライアルはお子様向けのARですが、将来的には成人した方にも使っていただけるよう企画を進めています。
たとえば、AR・VRのリハビリでの活用の可能性についても検討しており、麻痺のリハビリをされている患者さんに、ゲームをしながら上半身を動かすことで可動域を広げてもらうような取り組みも想定しています。認知の向上にも効果的な可能性があるといわれており、医学的なアプローチも進めていきたいと考えています。すでにVRを使ったリハビリは一部でスタートしているものの、医療現場で広く実用化するには通信回線やインフラ整備が不十分との声も。今後は、ドコモさん・ソニーさんのお力も借りながら、モバイル技術を駆使してインフラ整備にかかる時間や費用をどれだけ抑えられるか、挑戦していきたいです。
実用化まで、あと少し。医療現場でのVR・ARの活用により、これまでの病院の概念に囚われることなく、一人一人が少しでも楽しみをもって過ごせるような毎日が実現できるかもしれません。
※CaNoWとは病気や加齢などを理由に叶えられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクト。これまでに「大好きなサッカーチームをスタジアムで応援したい」「病に倒れてから一度も行けていない職場へ、もう一度行きたい」「生まれ育った土地をもう一度観に行きたい 」などの願いをサポートしてきました。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。