「人に頼ってもいい」ステージ4のがん抱え、旅先での気づき

この記事は、2022年1月17日 に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: 患者の願いを叶える『CaNoW』Vol. 51 「人に頼ってもいい」ステージ4のがん抱え、旅先での気づき」のタイトルで掲載されたものです。



2019年に食道がんと膵臓がんが発見された川良徳子さん(61)。体調が落ち着いたら、夫婦で大塚国際美術館(徳島県鳴門市)に行くことを楽しみにしていました。しかし、2021年に最愛の夫が胆管がんのため他界。がんの発覚からあっという間の出来事で、川良さんはすっかりふさぎ込んでしまったそうです。
そこで、娘の前園智美さん(35)が「CaNoW」(※)の願いを叶える企画に応募されました。「母をなんとか大塚国際美術館に連れて行きたい!」と――。CaNoWチームは、旅行医や医療スタッフ同行によるツアーを計画しました。

緩和医療を検討しながらも、長距離旅行にチャレンジ

川良さんが喉の違和感に気づいたのは2018年末でした。翌2019年2月に食道がんと診断、さらに膵臓がんも見つかりました。一度、手術でがんを摘出しましたが、しばらくして転移が発覚。重粒子線を当てて治療するも食道がんが再発し、胸膜播種も生じました。免疫チェックポイント阻害薬で治療しましたが、さらに肝臓への転移が発覚。緩和的治療に専念すること検討している中で、今回のツアーに挑戦されました。

川良さんが住む福岡県から大塚国際美術館までは、新幹線やタクシーを乗り継いで4時間以上かかります。参加メンバーは、川良さん、娘の前園さん、前園さんのお子さん2人、伯母さんの計5人。さらに、道中の急変リスクに備えて、旅行医や医療スタッフも同行しました。

旅行で家族とたわいもない話をする。その瞬間が大切

ツアーは1泊2日。当日朝、CaNoWスタッフが自宅を訪問すると、「期待と不安が入り交じっていました」と語った川良さん。バイタルチェックも問題なく、安心して家を出発しました。車で駅に着くと、新幹線に乗車。常に旅行医が同行していたため、移動中も落着いた様子で、家族とのおしゃべりを楽しんでいました。
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鳴門大橋から見える美しい海! 思わず写真をパチリ
新幹線が新神戸駅に着くと、介護タクシーに乗車。ゆったり身体を休めながら、宿泊するホテルに向かいます。ホテルの部屋で休憩した後、みんなでお土産屋さんを覗いたり、ディナーを満喫したりと、穏やかな時間を過ごしました。

「もちろん明日の大塚国際美術館も楽しみですが、今、この瞬間をみんなで過ごせることが何より嬉しい。ホテルの部屋でたわいない話しをしているときとか、一つ一つがとても大切な時間です」と、川良さんは語りました。
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ホテルに到着し、旅行医がバイタルチェック
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1日目の夜。これからディナーへ

夫と行けなかった憧れの美術館に、娘たちと

旅行2日目。いよいよ大塚国際美術館に向かいます。どことなく、川良さんの足取りも軽やかな様子。お孫さんの手を引いて前に進んでいきます。

大塚国際美術館は、世界の名画を陶板で再現した美術館。世界26カ国190余りの美術館が所蔵する西洋名画1000余点を、陶板で原寸大に再現し、展示しています。川良さんは、一つ一つの画を丁寧に、じっくりと鑑賞していました。
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旅行2日目。これから大塚国際美術館へ。
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移動が辛くならないように、車いすも利用しながら鑑賞。
大塚国際美術館は、敷地内から瀬戸内海を見渡せるスポットがあります。美術館を出た時はちょうどサンセットの時間と重なっていました。キラキラと輝く水平線と夕焼けを眺めながら、川良さんは家族と過ごす時間を噛みしめているようでした。

その後、往路と同じように新幹線と介護タクシーを乗り継いで、無事に帰宅しました。
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海岸越しの夕焼けを見て

まだまだ母と旅行に行けそうな気がした

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企画に応募してくださった娘・前園智美さん
今回、CaNoWに応募してくださった前園さんに、旅行の感想を伺いました。
「父が亡くなって以降、母はすっかり落ち込んで、体調も悪化していました。でも、色々な人の手を借りたら、出来ることはまだまだある。それを伝えたくて、今回の企画に応募しました。
母の体調が悪化しないか、当日の朝まで不安もありました。しかし、常に旅行医の先生も一緒だったので、安心して旅行を楽しむことができました。まだまだ母と旅行に行けそうな気がしました。また、私も普段は仕事や家事育児に追われ、母とゆっくり向き合う時間がとれませんでした。今回の旅行は、みんなでゆったり、のびのびと過ごすことができて、本当に良かったと思います」
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旅行について思いを語る川良さん

もっと人の手を借りていい
旅行の予定が患者を元気にする「旅行マジック」

「元々旅行は好きでしたが、病気になってから体調も不安だし、もう厳しいだろうって思っていたんです。でも、CaNoWのサポートを聞き、徐々に不安より期待が膨らんでいきました。
旅行が決まってからは、自分でも外に出て歩いてみたり、体力をつけてみたりと行動が変わったように思います。旅行医の先生が『旅行マジック』と仰っていましたが、早速効果が出ていたのかもしれません。

また、今までは人に甘えると申し訳ないと思っていました。人様に迷惑かけちゃいけないって。でも、今回の旅行をへて『もっと人に甘えてもいいんだ』と感じました。私のような病気を抱えた人は、旅行なんか無理じゃないか。そう思ってしまう方も多いと思います。でもCaNoWのようなサポートがあると、生きる力にもつながります」

※CaNoWとは、病気や障がいを理由にかなえられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクトで、企業やその従業員の寄付やサポートで患者さんの願いを叶えていきます。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。

このプロジェクトには、CaNoWの理念に共感したノバルティス ファーマ(株)の従業員が寄付しています。

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