遺伝性疾患について、一般向けに分かりやすく解説する「QLife遺伝性疾患プラス」。サイト開設1周年を記念して、遺伝性疾患の患者さんとご家族の「願い」を叶えるイベントを開催しました。多数の応募者の中から選ばれたのは、ムコ多糖症Ⅱ型のある中西結飛君(6歳)とご家族。象が大好きな結飛君と、「市原ぞうの国」(千葉県)に行き、象と触れ合う夢を叶えました。
進行性の難病、周囲の理解を得にくい一面も
結飛君は幼稚園に通う男の子です。普段は元気に遊んでいますが、4歳の時にムコ多糖症Ⅱ型と診断され、定期的に酵素補充療法(週1)や、治療薬の脳室内投与(月1)、関節のリハビリや療育(各週1)を行っています。酵素補充療法は朝8時半に家を出て、帰宅は夕方5時をまわることも。治療にかける時間が長いため、幼稚園への登園は以前の半分程度だと言います。また、ムコ多糖症は、現在の医学では根治できないと考えられています。希少な疾患のため、周りから理解を得ることが難しく、ご両親は悩む場面もあると言います。
「息子は幼稚園の年長ですが、ムコ多糖症によって発達に遅れがあり、中身は3歳の難病児です。友達と鬼ごっこをしてもルールを理解できず、鬼になっても一緒に逃げています。友達のおもちゃを壊してしまい、意地悪だとか、親のしつけが甘いんじゃないかと思われることも」(お母さん)
ムコ多糖症は進行性の難病。患者さんの平均寿命が10~15歳と言われ、だんだん体が不自由になっていくそうです。
「今は元気に過ごしている息子ですが、身体が動かなくなってしまう前に、たくさんの思い出を作ってあげたい。好きなことをさせてあげたいと思いました。息子は動物が好きで、特に象が大好きです。象に会うためだけに動物園に行くこともあります。ただ、普段遊びに行く動物園では、なかなか象と触れ合うところまではできません。息子の体が動くうちに、象と触れ合って、喜ばせてあげたいです」(お母さん)
大好きな象と触れあい体験! 目をキラキラと輝かせて

企画当日、「遺伝性疾患プラス」の1周年を記念して、スタッフから結飛君ご家族に記念Tシャツをプレゼントしました。Tシャツには象のイラストが描かれており、大喜びの結飛君。さらに、同行した医療スタッフが作成した象のアップリケもプレゼントされ、ご満悦な様子でした。


間近で見る象に圧倒されて…
この日はエレファントショーも開催。結飛君も、ベンチに腰を掛けてショーを楽しみました。象が絵を描いたり、サッカーをしたりと大盛り上がり。さらに、ショーの終盤では象の餌やりも開催。希望者は、自分の手で象に餌をあげることができる人気のイベントです。結飛君も象の近くまで行ってみましたが、あまりの迫力に圧倒されてしまって…。両親の手の上に餌を乗せて一緒にあげました。
また、象の鼻にぶら下がることができるアクティビティにも参加しましたが、怖くて乗ることができず。代わりに、ご両親が楽しみました。


当たり前の光景が、とても感謝すべきことだと気づいた
1日象と触れ合って大満足の様子の結飛君。お母さんに企画の感想を伺うと「大好きな象とたくさん触れ合えて、結飛はとても楽しめたと思います。ありがとうございます」とのことでした。また、ムコ多糖症に対し、日頃から感じていることを語りました。「診断を受けた時は、すぐに治療に専念しようとする気持ちと、現実を受け入れられない気持ちが混在していました。今だって、正直受け入れられていません。でも、時間は刻々と過ぎていき、結飛と一緒にいられる時間も限られています。負の気持ちに占領されるばかりでなく、1秒1秒を大切にしようと思いました。
また、病名が分かってからは、今まで当たり前だと思っていた光景が、とても感謝すべきことだったと気づきました。幼稚園から泥だらけの洋服で帰ってきても、トイレで失敗をしても、息子が元気に生きている証。お世話できる喜びを実感しています。結飛はごくごく当たり前の幸せを改めて気づかせてくれました。結飛がいると毎日が幸せであふれ、感謝もしています。改めて息子に『ありがとう』と伝えたいです」

今回の「遺伝性疾患プラス」1周年記念イベントでは、日ごろからサイトをご利用いただいている患者さんや、ご家族への感謝の気持ちをお伝えいたしました。遺伝性疾患プラスは、これからも遺伝性疾患と向き合う方々にプラスの情報をお届けして参ります。また、患者さんやご家族の声も発信し、多くの方に遺伝性疾患を正しく知っていただく活動を続けていきます。
※CaNoWとは、病気や障がいを理由にかなえられなかった「やりたいこと」の実現をサポートするプロジェクトで、企業やその従業員の寄付やサポートで患者さんの願いを叶えていきます。詳細はCaNoW公式ホームページをご覧ください。