がん再々発の20代女性「体が動く今のうちに…」と願ったこと

この記事は、2023年12月10日に、医療従事者向けWEBメディア「m3.com」内に、
「特集: EBMの先へ/患者の願い叶える『CaNoW』Vol. 62 「がん再々発の20代女性「体が動く今のうちに…」と願ったこと」のタイトルで掲載されたものです。

「私たち夫婦は海が好きで、結婚式は沖縄であげました。その後、私の脳腫瘍が発覚。体が動くうちに、家族で自然に触れ合える体験をしたい」。東京都に住む安室(やすむろ)早紀さん(29歳)から、CaNoW事務局にそうした願いが届いたのは2023年7月でした。その頃はADLが保たれ、遠出も無理がない病状だったため、CaNoWはご家族の沖縄旅行を計画しました。ところが、準備期間中に早紀さんの再々発が見つかって…。旅行はいったいどうなったのでしょうか。

根治の難しい患者さんの「〇〇をしたい」「〇〇に行きたい」という切実な思い。医師として、なんとか実現したい、力になりたいと思っても、現実には難しい場合もあるのではないでしょうか。エムスリーの「CaNoW」(かなう)は、そんな患者さんの願いを叶えるプロジェクトです。EBMをさらに深め、人間としての幸せを土台にする「NBM」「HBM」を大切にしています。
詳細は、CaNoW公式ホームページをご覧ください。

手術をするも再発、再々発。抗がん剤にも耐えたが…

羽田空港で待っていたCaNoWスタッフの前にタクシーが停まると、安室早紀さんと夫の雅史さん、息子のりつき君(2歳)の姿がありました。早紀さんが闘っている膠芽腫は、脳腫瘍の中でも悪性度が高くGrade4に分類されています。左手足の麻痺が進行し、歩行が不安定な状態になっていました。発症部位が右視床だったため、両眼ともに視野が欠損し、高次脳機能障害による記憶障害も生じています。そのため、雅史さんのお母さんも空港まで付き添ってくださいました。

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雅史さんが顔を近づけて、ゆっくりと「大丈夫?」と尋ねると、早紀さんは精一杯にうなずきました。この日は、ご夫婦の思い出が詰まる沖縄を2泊3日で巡るツアーの初日です。CaNoWの看護師がタクシーから車いすへの移動を介助し、飛行機に乗り込みました。


早紀さんが膠芽腫の診断を受けたのは、2022年8月のこと。手術で腫瘍を摘出しましたが、今年5月に再発し、放射線治療や抗がん剤治療に耐えてきました。しかし、その3か月後に再々発。遺伝子パネル検査の結果に適合する抗がん剤を使用しながら、療養しています。
りつき君がまだ1歳だった時に膠芽腫がわかったため、闘病で十分に遊んであげられなかったことを、早紀さんは悔いていました。雅史さんに対しても、心配をかけて心苦しい気持ちと、感謝を抱いていました。そうした思いから、「体が動くうちに家族で思い出を作りたい」とCaNoWに応募してくださったのです。

バリアフリーのはずが、車いすでは険しい道のり

早紀さんの病気がわかってからは、家族だけで遠出することが困難だったそうです。そこで今回は、CaNoWの看護師が必要なケアと感染症対策を確保したうえで、沖縄旅行を実行しました。

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那覇空港からは、沖縄本島の東側にある「果報バンタ」に向かいました。バンタとは沖縄の方言で「崖」「岬」のこと。よい知らせが来る岬として人気のある、絶景スポットです。バリアフリーだったものの傾斜のきつい坂道で、車いすでの移動は容易ではありませんでした。偶然にも「福祉関係の経験がある」というタクシーの運転手さんの力を借りることができ、なんとか車いすを押して岬に到着。そこには、透き通る海と、緑の生い茂る崖、そして穏やかな波の音が待っていました。ご家族それぞれが、果報が訪れることを願うひとときでした。

思い出の結婚式場で、思いがけないサプライズ!

ホテルでゆっくり体を休めた翌日、ツアー2日目は早紀さんの実母、斉藤加代子さんも合流しました。午前中に「美ら海水族館」を楽しみ、昼食をはさんでタクシーである場所へと向かいました。そこは、お2人が結婚式をあげた「アイネス ヴィラノッツェ 沖縄」(名護市)。安室さん夫妻がもう一度訪れたいと切望する場所でした。式場に到着し、見学を申し込むと快く受け入れてくださり、結婚式の時と同じスタッフさんが案内してくださることに。

全面ガラス張りのチャペルは、海と一体になったような神秘的な空間でした。夫婦としての始まりを誓った日が、ありありと思い起こされます。するとここで、雅史さんからのサプライズ! 琉球ガラスのペンダントと、思いを込めた手紙でした。ペンダントの色は、新婚旅行で訪れた宮古島にちなんで「ミヤコブルー」。手紙には、「妻になってくれて、ありがとう。りつきを産んでくれてありがとう。これからも家族3人ずっと一緒にいよう」と綴られていました。

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思いがけないプレゼントに少し驚いた表情で、雅史さんを見上げる早紀さん。家族との大切な時間をかみしめている様子でした。

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中止を検討するも「やりたい」。患者さんの強い思い

1時間ほどでアイネス ヴィラノッツェ沖縄をあとにし、次なる思い出作りの場へ。静かな「木綿原(もめんばる)ビーチ」(読谷村)でカヌーを楽しむプランです。麻痺の影響で体が少し左に傾くため、大事をとって見送ることも検討しましたが、諦めきれない早紀さん。麻痺の影響から声を発することも困難だったにもかかわらず、右手でグッドポーズを作り、「やる、やる」と意思表示されていました。

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その強い意思をどうにかして叶えられないか。カヌー催行会社のスタッフさんにCaNoWが相談すると、「パドルを持って沖に出ることは難しいものの、カヌーに乗った早紀さんの左側を雅史さんが立って支えれば、浅瀬に浮かぶことは問題ないのではないか。背中を支えるシートをカヌーに取り付けることもできる」と提案くださりました。
そこで、看護師が丁寧に体調を確認したうえで、短時間、浅瀬でカヌーを楽しむことにしました。

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歩きにくい砂浜ではインストラクター2人が早紀さんを抱え、いざカヌーへ。水深は数十センチですが、海に浮かぶ感覚、潮の匂いと風は紛れもなく本物です。祖母の斉藤さんとカヌーに乗ったりつき君にとっては初めての体験で、不思議そうに辺りを見まわしていました。早紀さん持ち前の行動力と、芯の強さによって、新たな思い出が作られました。

楽しみなイベントが、闘病中の希望になる

ツアーの最終日、朝食を終えて落ち合った安室さんご家族に、CaNoWからインタビュー。早紀さんは発話が難しかったため、雅史さんが早紀さんの気持ちを汲み取って、お話ししてくださいました。
お2人とも、ツアーの出発前とあとで気持ちの変化があったと言います。それは、「楽しいイベントがあると前向きになる」ということ。膠芽腫と闘いながらの生活は、決して平たんではありません。でも、あと何日で沖縄に行く、海に触れ合えるという目標があることで、希望につながったそうです。お2人ともに「少し無理をしてでもやった方がいい」と実感したようでした。


また、雅史さんは早紀さんへの思いがより明確になったことを振り返りました。チャペルで手紙を読み、どれだけ早紀さんがかけがえのない存在か、どんなに感謝しているか。今まで伝えきれなかった思いも、しっかり言葉にできたそうです。

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無事にツアーを終えた数日後、早紀さんからCaNoWにメッセージをいただきました。
「これからも旅行に行ったり、アクティビティをやりたいという気持ちが湧いてきています。自分で楽しみなイベントを作って、希望を持って前へ進んでいきたいと思っています」


重い病気があっても、次はどこへ行こう、何をしよう。新しい楽しみを見つけることで、安室さん家族の結びつきはより深まっていくのではないでしょうか。そのために医療職ができることがあると、CaNoWスタッフたちは再認識しました。

病気や障害がありながら「〇〇をしたい」「〇〇に行きたい」と願う患者さんはいませんか。エムスリーの「CaNoW」(かなう)では、願いを叶えたい患者さんを募集しています。先生からのご推薦をお待ちしております。
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