
一卵性双生児のMちゃん、Kちゃんは、生後7ヶ月頃に指定難病「脊髄性筋萎縮症 I型」(SMA)と診断されました。生後は両手両足を動かしたり、母乳を飲んだりすることができましたが、徐々に筋力が低下して約半年後には哺乳困難となり、経鼻経管栄養、呼吸管理が必要になりました。約3年間の入退院を繰り返しましたが、現在は人工呼吸器をつけて、胃ろうからの栄養、移動はバギー(電動車椅子)を利用しながら自宅で元気に暮らしています。小学校3年生になった二人は地域の学校に通っていますが、遠出するには大変な労力がかかります。母親の仲川瑠衣子さん(愛知県在住)は「娘たちに周りのお友だちと同じように旅行の経験をさせてあげたい」と、CaNoWに相談を寄せてくださいました。
遠出の荷物は「まるで引越しのよう」
「2人分の医療用品や着替えなどを持ち歩くため、入院時も荷物が大量です。遠出となると車一台がパンパンで、まるで引っ越しのようになります」SMAと診断された双子の娘さんを持つ仲川瑠衣子さんは語ります。人工呼吸器に使う加温加湿器の回路や蒸留水、ポータブルバッテリー、吸引や胃ろうのケアに使う医療用品など生命維持に欠かせない物が多く、外出といえば近場や病院ばかりだったそうです。
過去に一度、レジャーと休息をかねて県外のレスパイト施設に宿泊したときは、施設のスタッフの手を借りられるものの、夜間、Mちゃん、Kちゃんに付き添うのは瑠衣子さん一人。ほとんど眠れずに、楽しむ余裕はありませんでした。そのため「常時、看護師さんに付いてもらって旅行をしたい」と切実に願っていました。
そこでCaNoWでは、瑠衣子さんと相談のうえ、Mちゃん、Kちゃんを東京ディズニーランド(千葉県)に招待し、普段からサポートをしている訪問看護師の二人にも同行いただきました。
当日の朝、CaNoWスタッフが自宅を訪問すると、すでにMちゃん、Kちゃんはバギーに乗っていて準備万端。体調を確認し、介護タクシーに乗り込みました。いつもの訪問看護師さんが付き添っているので、Mちゃん、Kちゃんも落ち着いた様子です。トラブルなく名古屋駅へ到着し、東京駅まで新幹線で移動します。たんの吸引や胃ろうからの水分補給、体位、オムツ交換などのケアは多目的室で、そのほかの時間は車椅子スペースで、Mちゃん、Kちゃんが交互に場所を移動しながら過ごしました。

シンデレラ城が見えてきてほどなく、ディズニーランドに到着。まずは予約していたレストランで昼食です。Mちゃん、Kちゃんは胃ろうから食事をとるため、瑠衣子さんはあらかじめレストランに連絡し、料理をペースト状にしてもらっていました。外出先での食事はふだんより大変ですが、この日は訪問看護師がサポートし、和やかな時間となりました。
2歳のときに病棟で会ったミッキーと再会!
食事のあとは、アトラクションやショーへ。「ミッキーの家とミート・ミッキー」では、Mちゃん、Kちゃんの間近にミッキーがやってきてご挨拶。「入院していた2才の頃、病棟にミッキー&ミニーが来てくれたときは大泣きしていた二人でしたが、今日は楽しそうにしていました」と瑠衣子さん。わが子の成長に目を細めます。ディズニーランドはバリアフリーのアトラクションが複数あり、ほかに「クラブマウスビート」(ショー)や、「シンデレラのフェアリーテイル・ホール」(シンデレラ城)、「蒸気船マークトウェイン号」も楽しみました。マークトウェイン号の船上ではMちゃん、Kちゃんも、瑠衣子さんも、舞浜の夜風に気持ちよさそうに当たっていました。
瑠衣子さんが「いちばん娘たちに見せたかった」と言っていたのは、「エレクトリカルパレード」です。幸運にもコースの最前列で見ることができ、夜の光溢れるパレードに吸い込まれるように見入っていたMちゃん、Kちゃん。たくさんのキャラクターが二人に手を振ったり、手でハートポーズを作ったりしてくれて、温かいメッセージを受け取りました。
滞在時間の半分はケアに。無理のない時間配分
ショーやアトラクションを体験する合間には、たんの吸引などのケアや休憩、夕食の栄養剤、内服薬投与、ポータブルバッテリーの充電のためにケアルームへ移動。園内に滞在した約8時間のうち、およそ半分はケアなどにあて、無理のないように時間配分しました。体調不良時に備え、近くの病院へ主治医から紹介状を送っていただくなど、医師にも協力をいただきました。宿泊先のホテルには、事前に荷物を郵送し、人工呼吸器に使用する台やその他医療物資などを、普段から利用している医療機器メーカーに搬入してもらいました。瑠衣子さんと訪問看護師が、Mちゃん、Kちゃんに合わせて客室の環境を整えます。夜間の清拭や体位、オムツ交換、除圧、水分投与、吸引などは、訪問看護師のお二人で途切れのないケアを担っていました。


医師が学校のカンファレンスに出席
ツアーから数日後、CaNoWでは瑠衣子さんにインタビュー取材をしました。───東京から帰宅し、娘さんたちの様子はいかがですか?
おかげさまで体調を崩すこともなく、翌日も学校に行きました。“ディズニーハイ”というのか、刺激をもらったようでテンションも高く、とても元気に過ごしています。私自身は、常に「娘たちに何かあったらどう対応するか」を頭の中でシミュレーションしているのですが、ツアー中は二人の楽しんでいる姿を見てふっと力が抜ける瞬間がありました。訪問看護師さんやCaNoWのスタッフさんに助けられて、外出時の段取りもすごくスムーズだったことが大きいと思います。
───Mちゃん、Kちゃんは地元の小学校に通っているそうですね。
はい、訪問看護師さんやヘルパーさん、学校看護師さん、介助アシスタントさんがサポートしてくださっていて、私の付き添いなしで通学しています。学校の科目では図工や音楽が好きですね。SMAの症状で、歩いたり物を持ち上げたりすることはできませんが、声を出してのコミュニケーションをとることができます。手先のスイッチ操作や、視線の動きで操作する意思伝達装置で平仮名や数字を入力したりして、自分の言いたいことを伝えています。地元の小学校に通うにあたっては、主治医の先生をはじめ在宅医の先生にも大変助けていただいています。就学前から相談員さんと話し合い入学時から何度か、病院の主治医、在宅医の先生、医療従事者、学校の校長、教頭、担任の先生や養護教諭、福祉関係者が顔をあわせるカンファレンスを開いています。医師の先生は「ここは命にかかわることだから」と最初に仰ってくださったり、あるいは「教育のプロが言っているのだから」と学校の先生の話を尊重されたり、職種の垣根を超えてアイディアを出し合いながら二人の連携を作り上げていただき、とても感謝しています。そして学校側も安心して学校教育に取り組んでいただいています。
───瑠衣子さんは資格を取得して、お子さんが学校に行っている間にお仕事をされているそうですね。
重度訪問介護という資格を取り、障害のある大人の方のお宅へ訪問し、ヘルパーとして働いています。やはり子どもと大人とでは、ケアの内容も使用する医療機器も違います。娘たちの将来のためにも、とても勉強になっています。大変なこともありますが、少しずつでも働けたらと思っています。新生児マススクリーニングに「SMA」を追加できる
───SMAの治療について教えてください。
うちの娘たちは0歳でSMAと診断され、3歳ごろから髄腔内にスピンラザを投与し、現在は内服薬のエブリスディで治療しています。SMAは進行性の疾患ですが、治療のおかげで声が大きくなり、手先の力が強くなったように感じられます。劇的に回復するわけではありませんが、少なくとも運動神経と運動機能を維持することはできています。SMAは1日でも早く治療を開始することが非常に大切です。「新生児マススクリーニング」(先天性代謝異常等検査)は、従来の検査項目に加えてSMAの検査も追加できるようになりました。追加検査は、自治体によって公費だったり、実費負担が必要だったりばらつきがありますが、これから生まれるお子さんはぜひ受けてほしいと思います。もし可能性があるとわかったらすぐに治療を受けていただきたいと、SMAの娘を持つ母として感じています。
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